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『音楽作品の演奏ゲーム論』

「関ジャニ∞のTheモーツァルト 音楽王No.1決定戦」が3月30日に放送されました。

ファンの皆様はドキドキ、ハラハラしながら固唾を飲んで見守ってくださっていたようです。

期待に応えきれませんでしたが、番組を通して大勢の方々に演奏を聴いていただけたことは幸いでした。

 

制作スタッフの方々をはじめ、出演者の皆様と今回の収録をご一緒できたことを心から嬉しく思っています。

応援してくださった皆様、ありがとうございました!

また今後のコンサートでお会いできるのを楽しみにしています。

 

 

さて、最近こんな本を読む機会に恵まれました。

 

今年1月に発売された、大久保賢 著『演奏行為論:ピアニストの流儀』です。

 

まずは以下、目次を紹介します。

本書はピアノとピアニストにフォーカスした内容ですが、他の楽器(や歌)を演奏する人、または聴く人にとっても非常に興味深いテーマが扱われているのが分かるかと思います。

 

 

目次 演奏行為論 ピアニストの流儀(大久保賢)

 

序章 演奏行為への問い

 

【第1部 演奏の諸相】

第1章 バッハをピアノで弾く 演奏の平行世界(パラレル・ワールド)

第2章 作曲家の代理人 「解釈」としての演奏

第3章 作品から遠く/近く離れて 「創造」としての演奏

第4章 演奏それ自体 「技芸」としての演奏

第5章 内向きの演奏、聴き手、アマチュア

 

【第2部 演奏の行為論】

第6章 音楽作品の演奏ゲーム

第7章 演奏のマネジメント 演奏のコミュニケーション論

 

 

筆者が展開する「音楽作品の演奏ゲーム論」※ は特に面白く感じられました。

 

※「演奏ゲーム」は主に5つのゲーム(解釈・創造・技芸・認識・享受)から構成される。

例えば「創造ゲーム」の中でふるまう演奏家にとって、「解釈ゲーム」に属する者からの批判は何の意味も持たない。

(筆者はグレン・グールドの演奏に対するアルフレッド・ブレンデルの批判を引用している)

「技芸ゲーム」の演奏(技巧の誇示)に対する「解釈ゲーム」の立場からの批判も同様。

各ゲームが重要視する点を批判するとすれば、それはたんなる越権行為でしかない。

 

詳しい内容は本書を手にとっていただくとして、このような考え方・アイデアを頭の隅に置いておくと、演奏家も聴衆も、プロもアマチュアも、音楽の世界で生きやすくなるのではないかと思います。

 

また、第7章の「演奏ゲームのマネジメント」という項目には、演奏家を目指す人々への大きなヒントが書かれています。

ここで多くの読者は励まされたり、進むべき方向へと背中を押されるのではないでしょうか。

 

音楽作品を演奏したり、表現することを日常的に行う人は、迷ったり悩んだりすることはもちろん、他者からの批評や助言に喜んだり、あるいは戸惑ったり、他者との視点の違いを訝しく感じることが多々あると思います。

そんな人たち、それに聴き手として音楽を享受する人たちにも是非読んでいただきたい本です。

 

萬谷衣里